『南々ちゃん、班は木崎と一緒なんだろ~?

でも部屋はクラスの女子ふたりと3人部屋って言ってたじゃねえの。平気?』



「うん、平気よ。

ひそかにクラスの子たちとも仲良くなったもの」



『ああ、ねえ。

前に可愛くしてもらってたな~』



「ふふ、椛が赤くなってたやつね。

そうそう、朝早起きできたら修学旅行中もメイクとヘアアレンジするって言ってくれたの」



『俺の話は掘り返さなくていいよ~。

っつうことは……いっちゃんも大変だねえ』



……? 大変?



『自分の知らないとこで彼女が可愛くなってたら、たとえいっちゃんでも不安で仕方ねえよ?』




くつくつと。

揶揄うような電話越しの笑みに、「そんなことないでしょ」と返しながら視線を落とす。



左手の薬指には、彼がくれた指輪。

プレートに刻まれたものと、おなじ。



「それよりわたしは修旅中のいつみ先輩の方が心配よ。

おかずの作りおきは作ってあるからいいけど、放っておくと夜遅くまで仕事してるし」



『ああ、生徒会役員の時からそうだな~』



はじめて告白されたあの別荘でもそうだった。

彼はひとりで遅くまで仕事をしていたし、今でもその癖が抜けないのか、わたしが声を掛けなければ一体何時まで起きてるんだろうと思う。



最近は『遅くても2時までに寝てください』というわたしの言いつけを守ってくれてるみたいだけど。

それでもわたしがいつも起きる6時前には既に起きて仕事してることなんてザラだ。とんでもない。



同じマンションの下の階で同じように一人暮らししてる夕帆先輩にも、一応『何かあれば連絡ください』とは言ってあるけど。

……修学旅行中に倒れたなんて聞いたらシャレにならないからやめてほしい。