「え?」



「父さんと兄貴の家行ってるから。

とりあえず向こうに俺らの住める状況作って、今日は父さんの晩ご飯作って一緒に食べるんだってさ」



「え、でも夕陽のご飯、」



「ああ、彼女来るから作ってもらうかデリバリーで頼むかするって言ったら、ご機嫌に出かけた」



約束もしてないのに勝手に……!

まあご飯作ってあげるぐらいならいいけど……!



「っていうかもういい?

この体勢で『待て』とかどんな焦らし?」



この体勢、と言われて思い出すのは押し倒されている自分の格好。

否応無しに顔を赤く染めるわたしに、くつりと心底楽しげに喉で笑った彼は。




「反論なら……あとで聞いてあげる」



そう言って、また音もなく距離を詰める。



「や、待って」



「むり。……何年待ったと思ってんの」



そうだけど……!

わたしが言いたいのはそういうことじゃないんですよ夕陽さん!



「もう……なに?

あと10秒だけなら待ってあげてもいいよ」



とんだ生意気な子どもだ。

でもさすがに夕陽に向かって「ガキ」と言う勇気はわたしにはない。というか、言ったとしても言い返されてたぶん負ける。