「泣きそうではないけど……
頭ん中、色々、ぐちゃぐちゃになってる」
白い指先が、わたしの腕を掴む。
わたしよりももう大きくなったのに。まだ随分と細くて、脆く消えてしまいそうなほど儚い彼の美しさに拍車をかける。
「もどってきてくれて……うれしい、のに。
ナナの気持ち、わかんないから」
「、」
「どうしてくれんの、ほんとに。
……ナナと付き合う前から、どの関係になっても俺の心ん中ずっと"こう"だよ」
身を寄せて、わたしの肩に額をつける夕陽。
また髪を撫でたけれど、子ども扱いと彼が文句を言うことももうなくて。
空いた方の手で抱きしめてあげたら、ぴくりとその肩が揺れた。
「……ちゃんと好きよ」
「、」
「好きだから、ここにいるの」
ぎゅっと、わたしのことを抱きしめる夕陽。
好き、ともう一度至近距離でつぶやくわたしに、「もういい」と吐き捨てて、くちびるをふさいでくる。
「……ゆうひ、」
「うっさい、ばか。
……キスの時ぐらい、静かにしてよ」
理不尽な……
まあ、ひさしぶりに夕陽らしい甘いとも切ないとも取れるような表情見せてくれてるから、別にいいけど。



