「……あのさ。
念のために、仕方なく聞くけど。本当に俺のこと好きなんだよね?」
「……別に信じてくれなくてもいいけど」
「そ、うじゃなくて……
ああもー……なんでそんなめんどくさいの?」
はあ、と大げさにため息をつく夕陽。
わたしを見据えた瞳が、どういうわけかとても不安そうに揺れる。……そんな顔しなくても。
「俺はナナのことばっか考えて……
一緒に部屋にいるだけで、色々止まんなくなりそうだから。わざわざ雑誌読みながら気を紛らわせてるわけ。わかる?」
「………」
「……何でそんな顔すんの。
俺だってもう高校生になるんだし、普通にそういうことぐらい考えてるけど」
いや、別にそれについて何か言おうと思ったわけじゃない。
ただでさえ彼はスキンシップ過剰だし、別れる前にそうなりたかったってことも知ってる。だからたまに誘うみたいに触れてくるのも気づいてるけど。
「……夕陽泣きそうな顔してるから」
「はあ……?」
「自覚ないの? ……泣きそう」
手を伸ばして、チェリーブラウンの髪をそっと撫でる。
「また子ども扱いする」と不機嫌そうに愚痴ってから、じっとわたしを見つめる彼。
「……べつに、なきそうなわけじゃ、ない」
そう言うけれど。
透明な涙がいつ流れてもおかしくないほど、その瞳が不安定に揺れていた。