しれっと彼の口から出た「好きな女」ってワードに、どれだけわたしが踊らされるかも知らないで。
また呼吸を奪うことでわたしの余裕を崩しにかかる莉央に、どう対応すればいいのかもわからなくなる。
過去の話を聞く限り、なんだかんだこの人は自分を魅せる術を知ってる。
それに滑稽に惹きつけられるわたしの諭し方も。
「莉央、」
キスの隙間で彼を呼ぶ自分の声が、やけに甘い。
それに目を細めた莉央の首裏に腕を回せば、キスが深くなる。
「っ、ふ、」
「支えてやるから、肩の力、抜け」
キスと口調で甘く絆されて、すっと肩の力を抜く。
腰に回された腕を彼が自分の方へ引き寄せれば必然的に距離は縮まって、ソファの上で身体が密着した。
「っ……」
全身、なにもかも熱い。
彼の臙脂の髪よりも、もっともっと色濃い感情に溺れてしまう。ふたりきりになりたいだなんて、そんな。
「……もっと?」
もうすでに息が乱れてままならないのに。
莉央に首をかしげてそう問われた瞬間、全身が焦げるんじゃないかと思うほど熱くなった。
「っ、もっと……」
恥ずかしいくせに。
欲張りになって、結局自分から求めてしまう。
真っ赤になった頰に、子どもじみたキスが落とされる。
なんの気休めにもならないそのやわらかな感触を脳が覚えるよりも早く、またくちびるには深い口づけを与えられて。



