そう決めて、やわらかい髪に触れる。
寝癖ついたら直すのが面倒だから、という理由でふわふわの髪をいつもきちんと乾かすらしい彼。弟妹たちの髪まで乾かしてあげるらしく、本当に面倒見がいい。
「風暑かったら言ってね?」
「大丈夫だよ~」
髪から水分が飛んで、ふわふわといつものようなやわらかさを取り戻す。
シャンプーの香りが同じっていうだけで、わたしがどれだけ動揺しているのかも彼は知らずに。
「はい。おしまい」
「さんきゅ~。
乾かしてやるのはいつものことだけど、乾かしてもらうの、すげえひさしぶり」
ありがと、と。
笑った彼に「どういたしまして」とドライヤーを返す。それを片付けると、今度はわたしの手を掴んで身体を引き寄せた。そして。
「……ん」
ぺたんと座り込んだわたしの表情を覗くようにして、くちびるを合わせてくる椛。
良くも悪くもそういうことに関して慣れている彼が、わたしの余裕を奪うなんてたやすくて。
「……もっと俺にちょうだい」
甘く囁かれたかと思うと、身体が浮く。
抱き上げられたことを理解して全身を熱く染めるわたしをよそに、冷静にベッドにおろす彼。
「まって……ケーキは?」
「明日起きてからでいいよ。
……俺もう、我慢とかむりだし」
「っ、」



