……母性反応をすごく引き出されてる。

感情に敏い人だからか、良いようにコントロールされているような気がしてならない。



「ぎゅってして?」



「……おいで」



あれ。おかしいな。

さっきまでその腕に抱きしめられてたのはわたしの方なのに、気づいたらまたわたしが彼を抱きしめてる。



「……ななせ。

こんど、いっしょにご飯いこう?夕帆がこの間いくみさんと行ったお店のハヤシライスが美味しかったんだって」



「……うん。行こうね」



「ほかにも、デート、する?」




……あ、デートの誘いだったのかそれ。

確かに恋人同士で出掛けてるんだからデートか、と。よくわからない納得をしながら、んー、と質問の答えを考えていたら。



「またお部屋デートでもいいけど……

歯止めきかないと、"こう"なるから」



「っ、」



楽しげに笑ったルアの表情が、さっきまでの色気とかぶって見えて、よくわからないけど焦る。

というか……それ、面白がってる、よね?



「ルア……

まさかその口調とか雰囲気切り替えるのって、わざとやって、」



「あしたの朝ごはんフレンチトーストにしてほしいなぁって、椛に連絡しとこうっと」



【その3 八王子ルアの場合】



もう一度言おう。いや、何度でも言おう。

彼の雰囲気は詐欺だ。