「……嫌がらないんですか?」
「……嫌がってほしい?」
ふるふると、首を横に振るルノ。
彼の背景にあった照明がそばにあったリモコンで落とされて、排他的な空気が色濃さを増す。
「南々先輩」とわたしを呼ぶ声が甘い。
「……今日だけは、折れてあげるから」
ルノはなんだかんだ、わたしにわがままを言わない。
そりゃまあ、恋人に対して甘えるくらいのわがままは言うけれど。
こんな風に、彼自身が願うわがままを聞いたのははじめてだ。
椛が前にぽつりと何気なく言っていた。ルノはそういう環境にいたせいで、甘えられないと。
だから彼が望むなら、叶えてあげたかった。
まさかいちばんはじめにこれがくるとは思ってなかったけど。
「南々先輩」
「ん……?」
「……好き、です」
こんな時でも、彼の瞳は煌めいて綺麗だ。
薄暗くてもわたしを見透かすようなその瞳に、暗闇でもはっきり見えているんじゃないかと有りもしないことを錯覚する。
「だから……
だから、ぜんぶ、俺のものになってください」
もう彼のものなのに、それ以上を欲しがる理由。
それに気づいているから「わかった」と返せば、彼は心底うれしそうに笑った。



