知ってる。
椛も通っていた、私立の中学。
「窮屈な場所で生活してたんですから。
もちろん中学時代、俺に彼女はいません」
「………」
「経験なんて無いに等しいです。
……それに歳のことを気にしてるのは、俺も同じですから。本当にどいつもこいつも南々先輩のこと放っておかないし、年下だって別の男にナメられるのは、本当に嫌です」
指に絡んできた彼の指の冷たさに、ぴくりと肩が揺れる。
離すこともせずにただ受け入れていれば、ぎゅっと握られて、温度を共有する。
「年上は多少余裕ぶっても誤魔化せますけど。
年下は余裕ぶって隣に並ぶのが精一杯なんですよ」
「……ルノ」
外の温度は変わらないはずなのに。
不自然だった温度差はゆっくりと跡形もなく消えて、そのちょうどいい熱が心地良かった。
「……だから、頑張ろうとしないでください。
本当に、俺が追いつけないから」
まっすぐな視線を向けられて、肩に入っていた力が抜ける。
手を伸ばして彼の胸に顔を埋めると、引き寄せて強く抱きしめてくれた。
さっきまでの余裕げな表情は、わたしをとっくに追い越してしまっていたと思うけれど。
ルノがそんな風に思っていたなんて、知らなかった。
「キス、して」
恥ずかしくて、消え入りそうな声になってしまったけど。
しっかり聞き取ってくれたルノは、揶揄うこともせずに、わたしのくちびるを塞いだ。
学園の、王子様。
その彼がわたしだけにこんな表情を見せてくれるのなら、姫も悪くないなぁと、現金なことを思う。



