「南々先輩」



ちょっとだけ角張ったような声に、名前を呼ばれる。

それがルノのものだと気付いて振り返るよりも早く、後ろからぎゅうっと抱きすくめられて。



「この時期に屋上にいたら、風邪ひきますよ」



「大丈夫よ。わたしそこまで弱くないから」



「体育祭のあと体調崩してましたよね」



「……、

ルノもルアと一緒に体調崩してたじゃないの」



実りのない話をしながら言い訳がましく言ってみれば、彼は吹き出すように小さく笑う。

すっかり角のなくなった彼の声を聞いて、緊張してたのかな、とぼんやり思った。




「まあ。

こうやって先輩のこと抱きしめていれば、先輩は風邪ひかなくて済むと思いますよ」



「……うん。

でもそれだと、ルノが風邪ひいちゃう」



くるっと、腕の中で身をよじる。

身体を反転させて、抱きしめてくれる彼の背中に腕を回して抱きしめ返した。



「こうやって抱き合ってたら、

ルノも風邪ひかなくて済むでしょ?」



さすがにちょっと恥ずかしいけど。

いい匂いする、と、彼の首筋に顔を寄せていたら。なぜか急に彼が黙り込んでしまったから、思わず深く考えずに顔を上げた。



「え」



ちょっと待って。

……ルノさん、顔真っ赤なんですけど。