【おまけ】
「っ、いつみ先輩!」
早朝から。
迷惑極まりない時間に尋ねたというのに、彼は嫌な顔ひとつせず「おはよう。どうした?」と聞いてくれる。いい人すぎだ。
「夕帆先輩のことなんですけど……っ。
そのっ、なんていうか……男の人の格好の時、普段からあんなに意地悪なんですか!?」
いくら先輩たちが幼なじみだろうと、昨夜のことを話せそうにはない。
濁してそう伝えたのだけれど彼は言いたいことを汲んだらしく、ふっと早朝から綺麗な表情で笑った。
ちなみに夕帆先輩はまだ部屋の中で就寝中。
起きるとマズいから、早々に用件を済ませてもどらなければ……!
「好きなヤツほど、いじめたいんだよあいつは」
なにその小学生みたいな対応……!
っていうか照れていいのかわからないこれ……!
「まあ、でも。
あいつは、すげえお前のこと好きだよ」
それが独占欲の現れだろ?と。
言われて首を傾げてから下を見るけれど、何もなくて。「あとで鏡見ろよ」と言われたので、早速スマホのアプリを使って確認してみれば。
「っ、な……」
こ、これって、キスマークなんじゃ……っ。
っていうかいっぱいついてるんですけど!
「言っとくけど、
あいつは女の顔したオオカミだぞ」
「っ、ですよね……」
知ってるならもうちょっとはやく教えてほしかったけれど。
おかげさまで彼がいくら金髪碧眼の美女になろうと、夕帆先輩のことを男としか思えなくなってしまった。……結果オーライ、である。