「ああでも……

あえて女装するっていうのも、アリかもな」



「せん、ぱい」



「俺のこと男って意識してる顔、すげえいい。

……なあ、もっと、"男"の俺のこと欲しがれって」



どろどろに甘いセリフばかり吐かれて、頭の中がまっしろになる。

先輩のことが好きなのは事実なのに、そこに隠された男の人の顔に、どうしようもなく動揺する。



「っ……」



ベッドの上で追い詰められて。

女装をしていたなんて欠片も思えないほど男の人の顔ばかり見せられて、羞恥に肌が染まる。



先輩が"男"の表情を見せるたびに、

わたしの奥底にある"女"の部分を引き出される。




「夕帆、せんぱ……っ」



「だめ。ちゃんと名前で呼ばねえと」



くちびるから漏れる声が熱を帯びて艶を孕んで、甘さに支配される。

先輩好みなそれに身を包んだわたしは、どこまでいっても先輩に逆らえなくて。



「夕、帆」



「ん……いい子。愛してるよ」



こんな色気のある顔は、やっぱりほかの女の人には見せたくないなんて思いながら。



【その1 女王夕帆の場合】



ふたりきりのときにしか見せてくれない男の顔に、

どうしようもないほど溺れる。