「偶然の寄せ集めって、奇跡ですよね」



「……そーだな」



「でも奇跡って言葉じゃ片付けられないくらい。

……いつみ先輩は14年前から、ずっと、」



ずっと。その通りだ。

だから俺らは、この感情を言おうとはしない。



もちろん、

俺らの感情を南々ちゃんは知ってるけど。



「つーか、

寒空の下で男3人話してる絵面きっついわ」



一瞬全員が感じた同じ感情を掻き消すような、莉央の言葉。

それにケラケラと笑って、「リビングもどるか〜」とふたりを促す。




「椛先輩、お昼あたたかいものがいいです」



「リクエストがざっくりすぎるじゃねえの。

もうちょいはっきりしたリクエストしてくんねえと」



「すき焼きとか食いてえよな。

でもあれか、学校でやんのは厳しいか」



「それ以前に、学校で日常的に料理できること自体おかしいんですけどね」



すっかり冷え切ったペットボトルの中身を、一気に飲み干した。

……すき焼きか。できないことはねえけど、いっちゃんと夕さんが下りてこねえなら厳しいな。



「グラタンにするか〜。南々ちゃんの好物だし」



扉を開けて、C棟の中に戻る。

さむいのはさむいけど、風がないだけマシだ。