「泣くほど好きだもんね」
「呉羽うるさい」
「号泣してたもんね」
「っ、掘り返すなバカ!」
ばっと、クッションで顔を隠す夕陽。
その様子にくすくすと笑っていたら、別のクッションを投げてくるし。横暴だ。
「新しいネックレス、受け取ったら?
恋人でもないのにアクセサリーのプレゼントなんて、もらう機会もう二度とないと思うよ」
……兄ちゃんは誕生日にネックレスもらってたけど。
あれは別に彼女ひとりからのものじゃないし。
「……今度買い物付き合って」
「いいよ。どこ行くの?」
「百貨店」
中学生がふらっと行くところじゃないんだけどな。
何を買いに行くんだろうかと夕陽を見れば、「そのお返し買いに行く」らしい。
「ああ、ネックレスのお返しに?
……ブランドの化粧品でもあげるの?」
「違う、買いに行くのは香水」
【小ネタ4 まだまだ子どもです】
香水をプレゼントするのは、相手を自分好みの香りで独占する、なんてイメージだけど。
結局どうしようもなく好きだからとさり気ない独占欲を混ぜてくる夕陽に、思わず笑ってしまった。