言えば、嫌そうな顔をする。

はじめて出会った時からすでに夕陽はそういう子だったけど、南々先輩を好きになってからは、余計に子ども扱いされるのを嫌がった夕陽。



その理由なんて、言わなくてもわかってる。

2つ年上の彼女に並ぼうとして必死だったんだってこと、本人は隠したいだろうけど。



「……いつかまた、

夕陽なら誰かのこと好きになれるよ」



「……、うん」



いまもまだ、外せないままでいるネックレス。

過去に一度だけネックレスを付けるのを忘れた日、夕陽が尋常じゃないほど焦ってたのを覚えてる。



「ナナが……新しいの、くれるんだって」



するりと、ネックレストップを指でつまんで愛おしそうに目を細める夕陽。

ネックレス?と問えば、「そう」と一言。




「出世祝いに、って。

……その代わり、このネックレスはもうつけるなって意味だと思うけど」



「………」



「ほんと、冷たい女だよね」



誕生日にそのネックレスをもらったとき、どれだけ夕陽が喜んでいたのかは知ってる。

見つかれば校則違反だからって、わざわざネックレスを下につけているのを隠すために、今もカッターシャツのボタンを律儀に留めていることも。



「……その冷たい女を好きな自分がいちばんどうかしてる」



プライドの高い夕陽が、プライドも粉々に砕いて俺に縋ったのは一度きり。

南々先輩に、フラれた日。



あの日の夕陽は、本人の中でも黒歴史だ。

俺の家に来て、顔を見るなり泣くほど弱り切っていたのが相当恥ずかしいらしい。