彼が大切に想っている双子の弟を。

救ってくれた椛の存在は、ルノにとってすごく大きいんだろう。彼が椛を絶対的に信頼していることは、言われなくても知っていた。



知っていたというか、なんだかんだルノがどこまでも椛に対して甘いことは、見ていればわかる。

むしろあれで気づかないわけがないのに。



「椛は、すげールノのこと好きだからな。

呼び方にそういう理由があんの知ったら、絶対ウザいぐらいにルノに構うぞ」



「あんたとあたしは"すごく尊敬してる"のカテゴリーじゃないらしいわよ」



「まあ別にそこまで尊敬されるよーなことしてやってねーしな」



……そこは納得しちゃうんだ。

わたしだって尊敬されるようなことしてないんだけど、と思っていれば。



かちゃりと開いた扉から言い合いしながら入ってきたのは、椛とルノで。

この寒い気温の中、ふたりとも汗だく。……一体どれだけ本気で追いかけっこしたんだ。




「るーちゃんがマジで教えてくんないんだけど〜」



「知らないほうがいいこともあるのよ、椛。

その時が来れば、ルノも教えてくれるんじゃない?」



「え、まさかのそういう時限的なものなの?」



さりげなくルノをかばってあげた夕帆先輩の発言に、不思議そうに首をかしげている椛。

運悪く目が合ってしまったから、「いつかわかるんじゃない?」ととっさに口裏を合わせれば。



「……南々ちゃんが言うなら今はい〜や」



そう言った彼はあっさりあきらめてくれて。

ルノはほっとしたように息をついていたのだけれど。



【小ネタ1 ルノくんの呼び方】



おそらく椛は、一生教えてもらえない。