いつものように甘やかな声で言葉を紡いだルアの口を、手でぺっと塞いだルノ。

何かあるっていうのがバレバレだ。



もごもごと口を動かしたけれど解放してもらえなかったルアは、おとなしく口を閉じる。

それを見て、ルノはようやく手を離した。



「テキトーに言ってんのかと思ってたわ〜。

なんでるーちゃん呼び方変えてるんだよ〜」



「椛先輩うるさいです」



「ルノ、はやく白状したほうがいいわよ?

じゃなきゃあたしたちが無理にでも言わせるから」



……、なんかごめんね、ルノ。

言いたくなかったのかもしれないけど、ここに椛と夕帆先輩が混ざった場合はわたしにも止められない。わたしじゃどうしようもない。



でも彼は、それでも言いたくなかったらしい。




「なんでもないです」



「ルノ〜?」



「はいはい白状しなさい。ってこら、」



「絶対言いません」



落ち着いて紅茶を飲んでいたルノは、あっさりこの場から脱走。

面白がった椛と夕帆先輩は、そうなればどうやったって彼を捕まえて白状させたいらしい。



こういう時にだけ率先して、リビングから脱走したプリンスの片割れを追いかけていった。

……ほんとにごめんね、ルノ。



「……あいつら元気だな」