ただでさえなな、で同じ音が続くのに。
そのあとに先輩、をつけると、「せ」まで続いてしまうから、言いにくい。
「じゃあ、南々先輩って呼んでも良いですか?」
「うん。もちろん」
昔そうやって呼ばれていたこともあるから、懐かしいな、と思う。
ルノくんが「僕のことは好きに呼んでくださいね」と微笑んでくれて、とても和やかな雰囲気だったというのに。
「は……何なの……
るーちゃん俺に対して反抗期……?」
「気持ち悪い言い方しないでください」
割り込んでくる椛と、あっさり切り捨てるルノくん。
わたしの紅茶を用意してくれるようでキッチンに入っていく彼の様子を、カウンター越しに見る。パントリーから取り出された紅茶には、英語でロイヤルミルクティーの文字。
「なんか、るーちゃんすげえ姫に懐いてんじゃん……!
つーかなんで仲良いの、おかしいだろ〜!?」
「おかしくないです。ただ椛先輩みたいに余計なことを言ったりしてないだけですから」
「やっぱ反抗期じゃねえか」
納得いかないとでもいうように低い声で言った椛は、そのまま拗ねたのかソファに座ってテーブルの上のチョコに手を伸ばす。
今日は昨日のとは違うようで、光沢のある青い包み紙だ。
「ルノ、いいの?
あとで椛のスマホの検索履歴が、『高校生』『後輩』『反抗期』で埋まることになるわよ」
「大丈夫です。
外見と中身が釣り合わない人間をほかにも知ってるので」
「はは、やだこの子。
遠回しにあたしのことまでディスってくるんだけど」



