「いつみ先輩、わたし、」
『ただいまより、今年度生徒会長から来年度生徒会長への生徒会バッジ進呈を行います』
っ、いくみさん……!
言おうとしたのに遮らないでください……!
……なんて、言えるわけもなく。
こちらに向けられるほぼ全員の全校生徒の視線に、なんだか崩れそうになった。
目立つの好きじゃないせいで、すごく緊張する。
こんなことならいつみ先輩が名前を呼ばれた時に手を離すんだった。
「南々瀬」
どうあがいても一緒に壇上に上がってしまった事実は変えられない。
仕方なく頭の中で現実逃避していたら、いつみ先輩に名前を呼ばれる。
それから、
いくみさんが持ってきたプレートの上には。
「……え」
『OQ』を刻印したゴールドのバッジと。
新しい生徒会長がそれを受け取る際、逆に元生徒会長に「お疲れ様でした」の意味を込めて渡すためのミニブーケが乗せられている。
それはわたしもロイヤル部のファイルの中に資料があったから、進呈式の部分に目を通して知っていた。
だけどそれとは違って、もうひとつ。
「う、そ……?」
待って。いや、待って。
そんなはずはない。そんなはずないんだけど、でも、どう考えたって見間違えるわけがないそれ。
ほかのみんなも気づいたのか、ざわめきの中に悲鳴が混ざる。
とっさに見たロイヤル部のみんなも、驚いたようにわたしたちの様子を見上げていた。



