特に整列しなきゃいけないルールもないから、各々好きな人と見ればいい。
さすがに抱きつくのはやめたけれどそれでも寂しさを拭えないままのわたしの手を、先輩はぎゅっと握ってくれていて。
寂しさなんて吹き飛ばしそうな芸能科の卒業生たちのパフォーマンスに、目を奪われるけれど。
わずかな隙間に悲しくなってしまうなんて、本当にどうすればいいのか。
「、」
1時間ほど。
集大成とも言えるパフォーマンスのあとに、わっと広がっていく歓声。
世界が割れるほどの拍手が送られ、一度涙を堪えた芸能科の先輩たちが泣き崩れていく。
感動を詰め込んだような空間の中。
いくみさんがマイクを通して、芸能科のパフォーマンス終了を告げる。
それから呼び出されたのは、わたしと指を絡めたままのいつみ先輩で。
生徒会長引き継ぎのために呼ばれた彼は、集まる視線をまったく気にせずわたしを見下ろして。
困ったようにくすりと笑ったあと、そのままわたしの手を引いた。
「……いくら南々ちゃんが寂しがってるからって、連れて行かなくてもいいでしょうに」
「……いいんじゃない。
もうみんな付き合ってること知ってるんだし」
「ま、好きな女がさっきまで泣きついてたんだから、あいつも離したくないんじゃねーの?」
なかなかの声量で話すせいで、先輩たちの声が歩きながらも後ろから聞こえてくる。
生徒会長の引き継ぎにわたしが邪魔するわけにもいかないから、彼がステージに上がる前に手を離してもらおうと思っていれば。
「いくみ、準備してあるんだろうな」
「もちろん。ほら、上がって上がって」
なぜかいくみさんに勧められ、わたしまでステージに上がる羽目になった。
え。いや、わたしがステージに上がっちゃだめでしょ。



