我慢した。
……我慢はした、はずなんだけど。
「あらあら。
いつみと離れるのがそんなにさみしいの?」
卒業式が終わり、主に女子生徒たちがあっという間に泣き崩れていく中で。
卒業する側でもないのに、退場した卒業生を追うようにしてわたしたちも外へ出た後、ふたりの姿を見るとぽろぽろ泣いてしまった。
式中は、我慢してたのに。
「夕帆先輩と離れるのだって、さみしいですよ……っ」
優しく抱きしめて、ぽんぽんと頭を撫でてくれるいつみ先輩。
揶揄うような口調の夕帆先輩を半ば睨むようにして言えば、先輩は一瞬きょとんとして。
それから、いつみ先輩の手が離れたタイミングで、わたしの頭を撫でてくれた。
「……俺だって寂しいよ。
まあ南々瀬ちゃんがこの先もいつみと一緒にいるなら、必然的に俺らの間で関係は終わらないけど」
優しい口調で。
今日も金髪碧眼でわたしよりも圧倒的に女子力の高い美女のくせに、素でそう言ってくれるから。
「……なに泣かせてるんですか、夕さん」
余計に泣いてしまって、みんなになんだか苦笑される。
だって仕方ないじゃない。寂しいんだから。
「そろそろラストステージはじまるぞ〜?
ほら、全員で一緒に見ればいいじゃねえの」
ラストステージの準備のため、ドームはすこしの間立ち入り禁止。
集まっていた下級生たちがわらわらと先輩方に群がるけれど、わたしたちの元にはやっぱり誰も近寄ってこない。
それをいいことに先輩に泣きついていたわたしも、ようやく涙を拭って。
ドームの扉が開くと、みんなで一緒に中へと入った。



