「じゃあ、南々先輩……

これからも王学に通うんですか?」



「うん、そのつもり。

本当は帰国してすぐ来たかったんだけど、色々バタバタしてたからあっという間に始業式になっちゃって」



「そっか。

細かい話までは知らねえけど、大体のことは俺らも聞いたからねえ」



いつみ先輩が、みんなはもうわたしの事情を知っていると言っていたし。

わたしだって今更隠す気はないから、それは全然構わない。



「ななせ」



羽で、優しく撫でるように。

甘くやわらかく。それでもって愛でるような穏やかさで、わたしを呼んだルア。



返事すれば、彼は微笑んでくれる。

唯一無二の、グレーの瞳を揺らめかせて。




「おかえり」



差し出されたその言葉に。

どうしようもなく泣きそうになった。



「……、ただいま」



たった一言。

なのにみんなが、満足そうに笑みを浮かべるから。



"おかえり"って、言ってくれるから。



「ほら、そろそろ始業式行くぞ」



ごめんねと謝ろうとして、呑み込んだ。

もちろん、申し訳ない気持ちでいっぱいだけど。いまのわたしたちに必要なのは、その言葉じゃないような気がする。