──12月22日。

ハワイへの出発、前日。



「言っとくけど。

電話1本で人気アイドル呼び出せんのって、ナナぐらいだからね?わかってる?」



「わかってるわよ」



わたしは、夕陽と図書館で待ち合わせていた。

中ではうるさく出来ないから、当然外で待ち合わせ。図書館だと人も少ないし、騒げないからNANAだってバレにくいだろうし。



それに何より。

夕陽と出会ったこの場所で、話したかった。



「……話って。

文化祭の時に言ってたあれのことでしょ?」



付き合う前。よく本の内容を話してあげていた、思い入れのある席で。

彼はわたしをじっと見つめる。閉館まであと1時間もないせいか、ぱっと見まわりに人はいない。




「そう。……別れたときの、話」



前置きして、掻い摘んで簡単に自分の話をする。

両親はバイオ実験が終わるまでしばらく時間がかかるから、いずれ海外に一緒に住めるようにと、慣れるために留学を提案してくれた。



そして。

本当は、こうやって日本に帰国する予定はなかった。



「……2度と戻ってこないかも、しれないって。

そういう話が強かったから、留学を理由に夕陽を振った。でもバイオ実験の話はぜったい秘密だったから、夕陽にほんとのことを言えなくて」



「………」



「でも計画に終わりが見えてきたから。

最後にもう一度日本に帰っておいでって言われて、今年帰国したの。ごめんね」



実験があと数日で終わる。

そしたら今度こそ、わたしたち家族、は。