【完】こちら王宮学園ロイヤル部




どうして先輩がわたしの"秘密"を知っているのかは、定かではないけれど。

どう考えたって知っている口調だった。でもそれもきっと珠王の跡継ぎだから、知っていることで。



「迎えに来るって、あれはもう……」



「お前が知らねえだけで色んなもんが動いてる。

間違いなく迎えに行ってやれるから安心しろ」



「………」



「その代わり。

俺が迎えに行った時には、ちゃんと俺の手を取れ」



そう言い切った先輩が、次の瞬間わずかに目を見開く。

漏れてくるのは廊下の明かりだけで部屋は暗いのに、それでもわかるほどの目に見える反応。



その反応の理由に気づけなくて首をかしげたら、先輩の指先がわたしの頬を撫でた。

いや、違う。頬を撫でたわけじゃなくて。




「どうした……?」



……涙を拭ってくれてる、のか。



「泣いて、ます?」



「……自分で気づいてねえのかよ」



腕を引かれて、ぎゅうっと抱きしめられる。

どうして泣いているのか自分でもわからなかった。迎えに行くという先輩の言葉はうれしかったけど、それでも、そうじゃなくて。



ああでも、ちょっと待って?

わたし。──この言葉を、知ってる。



「『迎えに行く』……?」