そう言って渡されたのは、先輩がブレザーの中に着ていたグレーのカーディガン。
わたしもすでにセーターを着込んでいるけれど、先輩のカーディガンならサイズも大きいし、確かに重ねて着れる。
それが嫌ならブレザーな、と半ば脅しのように言われてしまえば、受け取るしかないわけで。
ブレザーを脱いでから自分のセーターの上に彼のカーディガンを着て、もう一度ブレザーに腕を通した。
「、」
う、わ……
先輩が今まで着ていたせいで、カーディガンに残った彼の体温があたたかい。いや、この際あたたかいことなんてどうでもいい。
問題は、先輩の匂いがするってことで。
なにこれドキドキするんですけど……!
何かされてるわけでもないのに落ち着かないなんて、一体なんの試練なんだ。
動揺を隠すように、袖に隠れた手をぎゅっと握る。
先輩の匂いがして。さらにはカーディガンの大きさだけで、彼が男の人であることを実感させられて。
「あ、夕帆先輩……」
「……電話か?」
きゅっとくちびるを結んでいれば、ブレザーのポケットでスマホが震えた。
先輩の態度でどうやら出てもいいらしいことに気づいてスマホを耳に当てれば、聞こえてきたのは今日も美人な彼の楽しげな声。
『デート楽しんでるー?』
「……ご褒美ウォークラリーです」
デートじゃありません。
……デートだと思ってるのはわたしの脳内だけです。
ちらりと向けた視線の先にいる先輩。
彼のブレザーの襟には、『R』を刻印した金の王冠バッジ。視線を落とせばわたしのブレザーにも同じ位置に、ピンクゴールドのそれが留められている。



