そりゃあ、まあ、ね……
わたしが好きなのは先輩だし、もうすぐここを離れなきゃいけないから彼氏なんて存在はつくってられないし。
「付き合うわけねえよな?
言わないだけで好きな男いるんだから」
「ちょっ、大和……っ」
何を言い出すんだこの男は……!!
しかもちゃっかり先輩との会話聞いてるし……!!
「……好きな男?」
「大和が勝手に言ってるだけなので……」
「勝手に、ねえ?
じゃあ俺が今から先輩に名前教えてもいいよな?好きな男じゃねえんだから、気にすることなくね?」
楽しげな笑みを見せる大和に、表情が引きつる。
ふるふると首を横に振ってみるけれど、大和は「だから好きなんだろ?」って追い討ちをかけてくる。わたしの気持ちを知ってるからずるい。
「言わないで……」
「……んじゃあ認める?」
「わかったから……言わないで……」
泣きそう、だ。
先輩に気持ちがバレたら、心の中でせき止めてたものがすべて溢れてしまう。そうなると、離れることが苦しくなってしまう。……だから。
「らしいです。
……なので、相手が誰か知りたかったら直接南々瀬に聞いてください。これ以上言ったら泣きそうだし」
知られたくない。
すべてがはじまった、14年前のあの日から。──わたしの気持ちの解決方法なんて、どこにもない。



