しかも夕帆先輩の読み通り、彼の体調は体育祭の最後までもたなかった。
ご褒美が発表されて間もなくダウンしたいつみ先輩は、ロイヤル部のメンバーにC棟の自室へ強制送還され。
「熱のあるいつみの部屋にいたら食われるわよ?」と不敵な笑みで夕帆先輩に脅されたから、わたしはあの後ひとりでグラウンドに取り残された。
いつみ先輩とのイチャイチャをどれだけネタにされたか。
そしてどれだけわたしが恥ずかしかったか。
……その冷静な表情、崩れないかな。
「いつみ先輩」
「ん?」
「……なんでもないです」
ふいっと顔を背けて、窓の外を流れる景色を見つめる。
お昼までは普通の授業があって、この行事に参加するメンバーは、この行事がお昼のあとの授業代わり。
まあわたしといつみ先輩には授業なんて関係なく。
大きな行事も一通り終えたから、体育祭後のロイヤル部は比較的暇だ。
10月最後にはみんなが授業を受けてる中、ロイヤル部はルノとルアの誕生日のお祝いもしたし。
……わたしが風邪ひいちゃったから誕生日当日より1週間ぐらい遅れてお祝いしたけど。
「……このバスってどこ向かってるんですかね」
「ああ……横浜方面だろ」
「へえ……」
言っておくけど浮かれてない。
横浜だと有名な赤レンガ倉庫ってフォトジェニックでなおかつデートスポットじゃなかったっけ?なんて、そんなことは断じて思ってない。
うそ。
……ちょっとは、思ってるけど。