そんな失礼なことを思いながらジト目で夕帆先輩を見るわたしの隣で。

盛大に二度目の舌打ちをしたいつみ先輩は、「どうするんだ?」と突然話の矛先をわたしへ向ける。



「えっ」



「だから、お前のクラスが優勝でいいのか?って。

普通科の奴らがせっかく譲ってくれてるんだろ」



先輩にそう言われて、一瞬くちびるを噛む。

正式ルールではここで勝負しなきゃいけないんだけど、でもみんなが良いって言ってくれてるわけだし……



「じゃ、あ……お言葉に、甘えて……」



「だそうです理事長。お騒がせしてすみません」



にっこり。話を理事長へと返す夕帆先輩。

そこでカメラが切られて理事長の話へともどるのに、冷めやらぬ熱気に顔が熱い。ほんと、とんでもないところを見られたものだ。




『今年の優勝クラスは、普通科2年1組』



どうでもいいけど、いつマスク外したんだろう。

先輩のことをずっと見てたはずなのに気づかなかった。あと、先輩に気を取られすぎてまわりの状況が何も見えてないって本当に重症すぎる。



先輩もまわりの話を聞いてなかったみたいだけど。



『今年の優勝賞品は、』



あ、そうだった。ご褒美があるんだった。

ちらり、と。視線を向ければ、そわそわと浮き足立つクラスメートたちが遠目に見えてくすりと笑みが漏れる。



普段は特進科のテストを受けてることもあって、わたしは何も大したことなんてしてないけど。

なんだかんだ女の子たちとも仲良くなれて、最近はちょっぴり楽しい。



『──普通科2年1組が全員パートナーを決めてペアで行く、ご褒美ウォークラリーだよ。

ちなみに。最終ポイントは高級ホテルの豪華ビュッフェだから、がんばってね?』