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「……先輩」
「……なんだよ」
いや、"なんだよ"はわたしのセリフなんですけど……と。
言えないセリフを呑み込んで、「どういう状況ですかこれ」と尋ねる。どういう状況って、先輩がわたしの膝に頭を乗せて寝転んでいるこの状況だ。
おかしい。
わたしは体調が悪い先輩のことを救護席まで連れてきただけのはずだったのに。
本部席と違って救護席は長椅子で。
椅子の上にブランケットを敷けば、多少痛いだろうけど寝転ぶことはできる。でも、だ。
だからといって。
どうしてわたしが先輩を膝枕してるんだ。
はじめは普通に話していたはず。
昼休憩が終わったあたりから先輩の体調がさらに悪くなってきたような気がして、「寝ますか?」と聞いたらなぜかこうなった。
「……弱ってるときぐらい甘えさせろよ」
「……、わかりました」
そう言われてしまうと何も言えなくなる。
それに以前、先輩に頼って欲しいと言ったのはわたしの方だ。
「………」
ジッと、何をするでもなく競技が行われていくのを見つめているだけ。
「最後の点数集計の手伝いするから」と言っていくみさんは理事長の元へ行ってしまったし、保健室の先生はわたしたちの様子に興味ナシ。
いや、この状況だと放っておいてもらえる方がありがたいけど。
やっぱり先輩はかなり熱っぽいようで。お昼中は外していたマスクで覆われている表情も、あきらかにつらそうだ。
元から口数が多い人ではないけれど、さらに口数が減っていって。
気づいたら、先輩は深い眠りの中。



