「……? なんかあった?」



不思議そうに首をかしげる椛。

そのときのいつみの様子を思い出して、思わずため息が漏れる。



今朝南々瀬ちゃんが泣きじゃくっていたことが関係しているのか、いつものような不機嫌さはなかったけれど。

なんとも言えない表情で考え込んでいたのは事実で、また余計なこと考えてたんだろうなと思う。



「……あいつ、ずっとさ。

名前も知らない女の子のこと探してて、」



「……うん」



「やっと見つけたのに……」



やっと。

探し続けてきたお姫様が現れたのに。




「……しかも両想いなのに。

みすみす逃すわけにはいかないでしょ?」



「……お互いにキてんじゃねえの?

言えない理由があるなら、南々ちゃんも両想いだってわかった上で正直に言えないことに苦しんでるでしょうに」



「……そうね」



両想いなのに。

今のままじゃ、きっと後悔して終わる。



「……お昼休憩か」



ルノの声が、グラウンドにお昼休憩を知らせる。

ほとんどの生徒がグラウンドに敷いたシートの上でお昼を食べるから、南々瀬ちゃんやルノ、莉央が集まってくると痛いほどに向けられる視線。



それでも、ある程度置いた距離から誰も近づいてこない。

別にそういう決まりがあるわけじゃないんだけど。