来年から……ああ、そうだ。あれだ。
彼女の誕生日にマンションへ押しかけたときだ。たしかに彼女は来年から親と一緒だと言っていたけれど。それって、まさか。
「来年、いなくなる……?」
「……無いとは言えねえな~」
「………」
例えばもし、そうだとして。
それでも付き合える理由はいくらでもある。でも、あれ?このパターンって、あれじゃね?
「……夕陽もそうじゃなかった?」
血の繋がった、名字の違う俺の弟。
あいつも確か留学を理由に別れてるんだし、離れることを理由にするなら似たようなもんかもしれない。……まあ、夕陽はそれに対して相当キレてたけど。
「っつうことは、海外飛ぶのか~……?」
「……あり得なくはないわね」
「………」
また海外に飛ぶことを考えて、言わないっていう手も確かにある。
でも何年掛かろうが遠距離恋愛として形にすることは出来るし、やはり留学を言い訳にするのは少々厳しいものがあって。
ということは、彼女はその留学という建前上の言い訳で、本当にある言い訳をなにか隠してるってことだ。
……いったい、なに、を。
「つーか、いっちゃんは~?
俺の告白どうせ聞いてたんだろ~?」
問われて、「ああ、うん」と返す。
いつみは確かにあの椛の公開告白を聞いていた。……聞いてはいたんだけど。