「……好きなのに付き合えない理由って何?」



「え、それ長年いくみさんと両片思いだった姉さんが聞いてくんの〜?」



「ばか、声でかい……!

あたしたちの場合は家柄だけど……」



「………」



「……そうだった」



家柄を知ろうにも、あの子の秘密がわからないんだった。

結局何者かわからないままだし。ルノの婚約話に割り込んだとき、政界の大物しか名前を知らないって言ってたんだっけ。ますます彼女がどうしたいのかわからない。



好きなら好き。

ただそれだけで付き合えるなら、俺もいくみもあんなに下手にこじらせたりはしなかった。




「泣かせにくるドラマとかで考えると、

病気とか〜? でも病気じゃねえしな〜」



「そうね。あとは?」



「……、離れなきゃいけない事情がある」



「………」



別れが迫ってる、とか?

でも彼女からそんなそぶりは一度も見てない。



「そーいや……

来年から親と住めるとか言ってなかったっけ」



ふと。

思い出したような椛の発言に、記憶の中から同じような言葉を探し出す。