◆ Side夕帆



「ちょっと椛こっちに来なさい」



借り物競争の2回目開始と同時に。

本部テント付近にもどってきた椛を拉致。調子の悪そうないつみとそれについてるルア、放送を担当しているルノに、借り物に出てる莉央。当然叱るのは俺になる。



「なんてことしてんの」



「ごめん、つい〜」



つい〜じゃねえよコラ。

お前のせいでどれだけ大騒ぎになったと思ってんだ。っつうか普通に考えてあの場で告白する椛の神経が小心なのか図太いのかわかんねえよ。



「……南々ちゃんさぁ。

いっちゃんのこと、すきなんだって」



ぼそっと。

いつみに聞こえないように声をひそめて告げる椛に、思わず目を見開く。




「それ……あの子が言ったの?」



「ん〜。ルノにも同じこと聞かれたって言ってたし、たぶんあいつも知ってんじゃねえかな〜」



正直に言うと、だ。南々瀬ちゃんといつみには上手くいってほしいし、それにはいくらでも協力する。

そして近頃の様子を見ている限り、南々瀬ちゃんが傾いてきてることはなんとなく悟っていた。



だけど確証がなかった。

でも本人が認めたってことはつまり、好きで。



「……、なんか。

あたしたち、大事なもの見落としてない?」



なんだこのもやもやする感じ。不完全燃焼。

南々瀬ちゃんは当然いつみの気持ちを知ってるし、それなら付き合ってしまえばいいだけのこと。なのにあの子が今日、泣いてた理由。



いつみにあんなに泣きついてた、理由、は?