『でもこれお題はクリアでしょ?』



椛の平然とした声が、世界を元に戻す。

それに乗じて進行役が『1位ですおめでとうございます!』と言ったから、しんみりとした空気が薄れていく。──後に、残ったのは。



「ごめんな、公開告白とか」



「……ううん」



順番が終わったからと、椛とふたりで話す。

流れが流れだから、一部の生徒の目がわたしたちに向けられていた。



「ルノが言ったのと、あと、いっちゃんのこととか。

いろいろ考えて言おうと思ってたんだけど、機会なくしてたから、今なら真剣に告れそうで」



つい言っちゃったって。

目を細めて笑う姿はいつも通りなのに、そこはかとなく漂う儚さが、淡くわたしを締め付けた。




「……いっちゃんのこと好き?」



「……ルノにも、同じこと聞かれた」



苦笑する。隠してるのになぜかバレてる。

あと2ヶ月ほどなのに、このままじゃ彼を好きな気持ちが本人にバレてしまいそうで怖い。



「好きよ。……だから、苦しいの」



切なげな笑み。

わたしを好きでいてくれる彼にそう伝えるのは間違っているけれど。言えないこの状況では、それが馬鹿みたいに気休めになる。



「じゃあ、俺と一緒だ」



どんな思いでそう言ってくれたのか考えたら、余計に苦しくなった。

苦しくなって。それを隠すみたいに伝えた「ありがとう」に対して首を横に振った彼は、やっぱりとても優しかった。