……ある意味ルアがいちばん落ち着いてる。
まあルノと共鳴してるだけあって、本人にしか感じ取れないような何かがあるのかもしれないけど。
「……そもそもよー。
部屋にすら入れてもらえないんじゃねーの?」
「……だからルアを呼んだんだろうが」
「ああ……
まあ、ルアの名前があったら、一応入れるわな」
話を聞いてもらえるかは別だ。
っていうか、普通に考えて聞いてもらえないだろ。珠王もデカい医療組織だけど、政界は八王子が欲しいんだろうし。
軽く相手の子のプロフィールを見せてもらったけど、父親どころか祖父まで政治家だった。
敷島って名前はそこそこ有名だからな……
それこそ引いてもらえるなんて甘っちょろいことは考えてない。
考えてない、から。……どうすることもできないし、困ってる。
ここで敷島側に裏金問題やらなんやら、ネタにできそうなものがあるならまだしも。
探った限りではそういう話は出てこないから、余計に切羽詰まってる。
「いつみ様、到着いたしました」
そうこうしているうちに、料亭ついたし。
どうすんだマジで、といつみを見やる。
部屋どころか料亭で止められたらどうしようもねえから全員スーツを着てるけど、椛やら莉央やらは髪色からして危うい。
そういう俺は、めずらしくオフなカッコ。
つまりひさしぶりの男の姿で。
"NANA"の兄貴ってバレたらまた面倒だから、ごまかし程度にカラコンはめて、だてメガネだけはかけてきたけど。
「……どうするつもりなんだろうな」
迎えてくれた料亭の女将に、何かをぼそぼそと話しているいつみ。
髪色をちらちらと見られてはいるけれど、一応料亭の中にはあっさり通してもらえた。



