◆ Side夕帆
「ねえあんた、勝ち目あるの?」
──土曜日。
南々瀬ちゃんとルノを除く面々は、珠王の関係から出してもらった車で、とある料亭に向かっていた。格式高く、有名な老舗の料亭。
何を隠そう、ルノの婚約をどうにかしようというこの集まり。
双子の弟であるルアは、弟であるから呼ばれていないし、一緒にいるけれど。
「……厳しいだろうな」
「厳しい、って……
どうすんだよ〜。どっちみち婚約するとかで自棄になったるーちゃんが、もし署名でもしたらおしまいなんだろ〜?」
「……わかってる」
そわそわと、誰もが落ち着かない時間を過ごしている中で。
いちばん落ち着かないのは案の定、ルノの面倒をよく見ている椛。……いや、面倒を見てるのはルノの方で、面倒を見てもらってるのか。
「つーか、南々瀬呼ばなくてよかったのかよ?」
「……考えたんだけど、ね。
ルノが頑なに拒んでるんだから、言うのもどうかと思って」
「もし婚約なんかしちまったら、
あいつ自分のこと責めるかもしんねーぞ」
莉央は優しい。
真綿みたいに、傷つけない優しさを持ってる。
それでも尚、絶対的に従順な相手はいつみだ。
だからいつみが「言わなくていい」と言えば、莉央はそれ以上口を挟んだりしない。
「……だいじょうぶだよ。
念のため、母さんには、ルノにすきなおんなのこがいるって話、してあるから」
そう言って、窓の外を流れるように進む景色を、目を細めて見ているルア。
どこかふわふわとした雰囲気はいつも通り。だけどルアの中で、何か揺らがない芯がある。



