「このファイルの中身は、ルノの婚約者の情報が入ってる。
ぼくは顔合わせしてないから、情報を教えて欲しいって言ったらいくみさんが用意してくれた」
「……そう、だったの」
だからそのファイルを、ルアに渡したのか。
この件をルノがわたしに知られたくないのなら、彼の前でファイルを見せてもらうことができない。理事長室から戻る道すがらで、目を通した。
「……、この子って、政治家の娘なのよね?
どうして八王子が、政治家とつながりを?」
敷島 綺音(しきしま あやね)と書かれた名前の隣には、顔写真もあった。
年齢はルノとルアと同じで、わたしよりもひとつ下の女の子。可愛らしい人だ。
「もともと八王子家は……
警察組織から派生した企業なんだよ」
「……そうなの?」
八王子が有名な企業なのはもちろん知っているけれど、はじまりは警察なのか。
そこまでは知らなかった、とじっくりファイルのプロフィールを一字一句逃さないように読む。
「ぼくたちの、曽祖父は警視総監だったからね。
政界とつながりがあって、そこから支援を受けてできた八王子の展開のひとつがこの学園だよ」
「、」
「今はもう支援が必要ないくらい大きな企業に育ったけど。
まだ政界のつながりは切れてないから、そういう関係で選んだんじゃないかな」
なるほど。
むずかしい話ばかりでついていけないところもあるけど、とにかく昔から八王子家と政界にはなかなかのつながりがあるらしい。
それに、不滅の企業だって、相手は有利な方がいい。
政界ならハズレは少ないだろうし、理に適った相手だ。
「大前提として……
ルノは、婚約なんてしたくないのよね?」



