その原因が何かなんて、わかりきったこと。
わたしの中にある不安が大きいからだ。
「ねえ、ルア……
さっき言ってた、ルノのことなんだけど、」
「……婚約者がいるんだよ」
「……え?」
婚約者? 婚約者って……誰に?
そう聞こうとして口を閉ざした。ルアがグレーの瞳でわたしを射抜くだけで、それが誰なのかわかったから。聞くだけ野暮だ。
「どういう、こと?」
「勢力を伸ばし続けて、今や"不滅の企業"って言われる八王子とパイプを繋げたい企業はたくさんある。
様々なジャンルを手がけているだけあって、業界の数だけその相手は増える」
まっすぐに。
事実を淡々と告げるルアは、わたしの目から見てもすごくしっかりしていた。彼も八王子の人間なんだと、そう思わざるを得ないぐらいに。
「でも、跡継ぎって言われてるルノと結婚すれば戸籍上で結ばれるんだから、絶対的なつながりを結べる。
……その地位を欲しがってる企業ももちろん色々あって、その中のひとつと婚約を結ぼうってなってて」
「、」
「文化祭が終わったあと、くらいかな。
その相手と顔合わせはしたんだけど、はやくしっかり関係を結びたい相手が、本格的に婚約の確定を急かしてて」
──世界が、不穏に軋む。
色を失くすように、ひび割れて、散っていく。
「ルノは、南々瀬にこの話を知られたくないみたい、なんだよね。
さすがにこんなに早急に確定を迫られると思ってなかったらしくて、一応返事はまだ保留だけど、」
おそらく時間がもうないってことはわかる。
そしてルノがわたしに知られたくなかったその理由も。……自惚れではあるけれど、わかった。



