「王学はね。
ぼくが通ってた中学とは、ちがうんだよ」
「……うん」
「八王子の名前が持つ意味が、変わった」
はっきりとした口調で。
春の匂いはそのままに、どこか穏やかな表情で。それを見たら、なんだか泣きたくなってしまった。喉の奥が熱いのを隠して、意味?と反芻する。
「中学の頃は、八王子っていう名前に、ぼくが釣り合ってなかった。
……でもね、今は。その八王子の名前が、ぼくを守ってくれるものになったんだよ」
この城の絶対王者を、裏で支える人。
王宮学園の、最高責任者。
ロイヤル部の名前変更を許して、生徒会の不思議なルールをつくって、点数制度なんかも取り入れて。
異色の学園を築き上げた、この学校の、理事長。
「父親が理事長になれば、どう足掻いてもぼくが有利な立場に立つ。
だからぼくは未だに八王子の名前に助けられてる、って。そう思ってたけど、」
「……うん」
「誰もね、ぼくのことを責めなくなった」
その一言に込められた言葉に、本当に涙が出そうになった。
ルアが殻に閉じこもっている間、学園内にひそめく噂の中には、やっぱり悪いものが多かった。だけど最近は、まったくそれを聞かない。
ルアも、みんなと同じ立場にいて。
第一第二だなんて、ふざけた呼び方はなくなった。
「ルノだけじゃなくて。
ぼくのことも救ってくれてありがとう、南々瀬」
ふるふると、首を横に振る。
瞳に溜まった涙のせいで、視界の下半分がおぼろげに霞んで見える。



