自分のことは何も話さないわたしに、彼らは今何を思っているんだろう。

ルアも、ルノも、椛も、夕帆先輩も、莉央も。



自分から、過去の話を打ち明けてくれた。

わたしのことを、好きだと言ってくれた。



いつみ先輩、だって。

"名前も知らない女の子"の、ためだけに。



まぎれもない、わたしのために。

好きだと言ってくれたけれど。……それでも。



「変わりません」



17年間わたしの中に枷として残っていたものが、ようやく解けてなくなる。

まるで呪縛のようだったそれが。いつ達成できるかわからなかったそれが、17年かけてようやく、終わろうとしてる。



ようやくわたしたちは、

"普通"の家族に、もどれるんだから。




「そっか。

……うちの珠王がね、どうしてもきみに聞きたいことがあるんだって」



「いくみさんが?」



「うん。詳しいことは、いずれ本人から」



いくみさんが聞きたいことってなんだろう。

彼はいつみ先輩のお姉さんだけれど、わたし自体と何か大きな関わりがあるわけじゃないし……いつみ先輩の、ことかな。



「それじゃあ、実行委員お疲れ様。

もうこんな時間だけど、ゆっくり休んでね」



「あ、はい。おやすみなさい」



ぺこりと頭を下げて、ひらひら手を振る理事長を見送る。

その姿が見えなくなってからリビングにもどれば、案の定みんな雑魚寝で、起きる気配はなくて。まるで現実逃避をするみたいに、文化祭中スマホにおさめたみんなの写真を眺めた。