「……なんですか?」
遠目で見てもわかるぐらいに整った顔。
近くで見てももちろん綺麗で、ああそういえばこの人人気アイドルグループの一員なんだっけ、といまさらなことを思う。
「俺はね。
……美人なら割と誰でも遊べるタイプなんだよ」
「さらっとめちゃくちゃ最低じゃないですか」
「相手がそれに同意してるんだから、別に最低なことはしてないよ?
……でも、俺自身は。そっけなくて振り向く気配のない美人って好きなんだよね」
「は、あ……」
「どう? 一回俺と遊ばない?」
いままでの対応は、めちゃくちゃ真面目だったのに。
紳士ぶっていただけで、どうやらこっちが本性らしい。様子を見ていた莉央が、信じられないとでも言いたげにわたしたちを見てるけど。
「お断りしま、」
「却下」
ぱしっと。
わたしの手には一切触れずに、彼の手だけが綺麗に払われる。すぐそばにいた夕陽がいつの間にか起きていたようで、彼は心底不機嫌そうに顔をゆがめた。
「手出さないで。
……いくらリーダーでも、ナナはだめ」
「ほんと、らしくないなぁ」
NANAらしくない、と。
そう言った彼は別にわたしに執着があるわけではないようで、あっさりと離れて元いた場所に座り直した。……なんか、この雰囲気、きらいだ。