そう言って夕帆先輩がリビングを出ていくと、いつみ先輩は何か言いたげにわたしを見てからため息のようなものを漏らす。

取り出したスマホの液晶を撫でてからいつみ先輩も部屋を出ていってしまい、キッチンに行っていた莉央が「あれ」と小さく声を上げた。



「いつみは?」



「たぶん、電話だと思う。

夕帆先輩と椛のことパシらせるとか言ってたし」



「あー……」



俺も差し入れ買ってきてやればよかったな、と。

言いながら莉央が飲んでいるのは、どこかの屋台で出しているんだろうスムージー。……鮮やかすぎるぐらいに緑色だ。



「ねえ莉央。それ美味しいの?」



「ん?ああ、これか。

全然苦くねーし美味いけど。分けてやろうか?」




差し出された透明なカップ。

遠慮するのもなんだし、とお礼を言ってストローに口をつけたのはよかったけれど。



「間接キス気にしないタイプなんだ?」



ミナさんににっこり微笑まれて、咽せ返りそうになった。

それをなんとか堪えてスムージーを飲んでみれば、確かに味は美味しい。毒々しい見た目ではあるけど苦くない。程よく甘い。



「結構スキンシップ気にしないタイプだよね」



「……ロスに留学してたので」



「じゃあ間接キスぐらい気にしないよね。

まあ、結構本気で口説かれるのは苦手みたいだけど」



ミナさんが、なぜかわたしのそばまで歩み寄ってくる。

もう一度お礼を言って莉央にスムージーを返したことで空いた手を、掬うようにして握られた。