「……本当に、お前は鈍感だな。

いや、好意を知っている上でそうやってんだから、小悪魔でしかないのか」



「………」



「まあ、俺が言えたことじゃねえだろうけど。

それでも好きな女は自分だけで独占したいんだよ」



だ、誰か先輩の甘さを止めて欲しい。

どうしてふたりきりになると、この人は甘さばっかり発揮するんだろう。全身が思考まで熱く溶かされてるような気がする。



「先輩、」



「ん?」



「……わたし、」




ぎゅっと。繋がれた手に力を込める。

彼に向けられるまわりの女性の視線に焦れて仕方ない。焦れて、でもそんなこと言えなくて、甘さに侵食されそうになって、既(すんで)のところまで出かかった言葉を呑み込む。



「みさとと、約束したんです。

だから、クレープ買いに行っても良いですか?」



わざとらしく、話を逸らす。

彼は「ああ」と二つ返事でそっちの方へと向かってくれた。



1時間もふたりでいられるなんて、どうすればいいのかわからない。

最近は仕事が忙しくてお互いまともに話す時間もなかったのに、こんな、甘い言葉ばかり。



「………」



そういえば。

わたしが望めば彼らとこの先も一緒にいられるって、理事長は言ってたっけ。



「……南々瀬?」