「……手」



「……手?」



「繋いでおいたほうが良いだろ。

……お前ふらっとはぐれそうだからな」



ふらっとはぐれそうって。

どんなイメージなんですかそれ、と。文句を言おうとするよりも早く、手をつながれる。



……今日はやたらと、スキンシップ過剰だ。

さっきもくちびるに触れられたし……、って、これは思い出すと恥ずかしいからやめよう。顔が赤くなる。意識しないように、と。決意した瞬間。



「それに。

お前のこと好きにさせてると、ほかの男が放っておかないってことがよくわかった」



あっけなく決意を崩されそうな甘いセリフを吐かれて、くらくらする。

……好きだって、言いそうになる。つながれた手が嬉しくて離せないなんて、我ながら乙女思考すぎて恥ずかしい。




「お前が誰に惚れるかは、お前の自由だ。

でも。……俺の前で必要以上に仲良くされんのは面白くねえんだよ」



「してませんよ」



「してるだろ。

俺よりもあいつとの距離感が近いのも納得がいかない」



あいつ? あいつって、夕陽のこと?

たしかに仲は良いけど、夕陽との距離感は特別近いわけではないと思う。まあ会うたびに迫ってくるのは少し困るけれど。



「それに、お前嫌そうじゃないだろ」



「……嫌ではないですよ」



完全に好意のない相手から同じことをされるなら、話は別だけど。

夕陽に対しては恋愛感情じゃなくともそれなりの好意があるわけで。だけど彼は、それもどうやら気に食わないらしい。