きゃあきゃあと、色めき立つ声が止まない。

それはもちろん隣を歩く彼へのもので。



「ってか、見てあれ……!」



「やっぱ付き合ってんじゃね……?」



その彼とわたしの間で繋がれた手に対しても、だ。



──13時過ぎ。

わたしは受付で、いつみ先輩のことを待っていた。普段は時間に遅れたりしないいつみ先輩が時間を過ぎてもやってこないのは珍しい。何かあったのかと電話を入れようとした、タイミングで。



「いつみ、きたよ」



一般の受付の手伝いをしていたルアにそう言われ、顔を上げればこちらへ歩み寄ってくるいつみ先輩。

すこし前の触れ合いを思い出して顔が赤くなりそうになったけど、「じゃあ休憩行ってくるね」と先輩と並んで歩き出した。




……のは、良いものの。

グラウンドまで向かう途中、なんだかとても気まずく感じてしまう。



どこか行きたいところありますか?とか。

リビングにいる彼らのことを、大丈夫ですか?と聞くぐらいの質問はあるのに。



「……なあ」



「っ、はい……!?」



「……なんでそんな驚くんだよ」



何も言えなかったわたしに、ふっと笑みをこぼす先輩。

それを見ていたらなんだか肩の力が抜けて、勢い良く返事してしまったことに気恥ずかしくなりながらも、「なんですか?」と改めて尋ねる。



そうすれば先輩は、

言い淀むように一度視線を流した。