まあ、ある意味"良い"のか。

コイツはずっと大人びててそういうとこがなかったから。南々瀬のおかげで、ちゃんと人間味のあるヤツになってる。



「わかった。……椛、お前は?」



「俺は莉央ちゃんが休憩って聞いたから代わりにこっちのお留守番〜。

問題も起きてねえしな〜。今んとこ『Fate7』が予定よりも圧倒的に早く来たのが1番問題なんだよねえ」



「ほら、いつみは南々瀬ちゃんと回るんでしょ?

残り時間少なくなるから早く行ってあげなさい」



そう言われて夕帆と椛にバトンタッチし、リビングを出る。

平和的に解決したように見えて、仲の悪い兄弟が同じ部屋にいるのが不安だよな。……まあ椛もいるし、なんとかなるだろーけど。



「んじゃ、俺はスポーツ科のヤツ適当に探して回るから。

お前は南々瀬と1時間回ってこいよ」



ひらっと。

軽く手を上げて、受付にいる南々瀬のところへと向かういつみに声をかける。それから背を向ければ、遠くからの喧騒で掻き消されそうなほど小さく名前を呼ばれた。




「んー?」



「………」



「なんだよ。

言いてーことあるなら、さっさと言えって」



「……いや。なんでもねえよ」



「……なんだそれ」



はあ、とため息をついて、「じゃーな」と今度こそその場を立ち去る。

当然呼び止められることはなくて、振り返ってももちろんいつみの姿はなかった。



……ま。

言われなくても、いつみが何を言いたいのかはなんとなくわかったけど。最後まで尽くすと決めたんだ。いまさら、どうってことねーよ。