「ハイハイ、そこまで。

あんたたち何盛大に揉めてんのよ、文化祭中に」



ガチャッと。

リビングの扉が開いたかと思えば夕帆と椛が入ってくる。時間を見れば間も無く13時。はあ、とため息をついた夕帆は、にこりと笑顔を見せた。



「どうも、初めまして。

せっかく来てもらったのにお騒がせしてごめんなさいね」



「……王学の生徒会って女の子いないよね?

今年はふたりもいるの?」



……ああ。そーだったな。

オネエを見慣れすぎると、中身は男だけど見た目は女っつーことを忘れるらしい。いくら目の前に金髪碧眼美女がいようと、俺の脳がコレは男だって認識してる。



「違う。これの中身は男」



嫌そうな顔をしながら言ったのは夕陽で。

それに夕帆が表情を引きつらせてるけど、これ大丈夫なのかよ。




「男? え、女装ってこと?」



「余計なことバラしてんじゃねえよクソガキ。

それよりお前南々瀬ちゃんに何したんだよ」



……素出てんじゃねーか。

っていうかもう隠す気ないんじゃねーか。突然声色変えるからびっくりされてんだろうがよ。



「何もしてない。したのはそっち。

っていうかむしろ俺は被害者なんだけど」



「先に迫ったのはお前だろ」



「あーハイハイ、なんとなくわかったからちょっと黙れ。

いつみ、莉央。お前ら休憩時間。んで、特別受付の方はリストに上がったの全部通ったから、南々瀬ちゃんに休憩終わったら受付じゃなくてここ来てって伝言しといて」



……今回ばかりは、夕帆がいてよかったと思うしかねーな。

普段は大人しいくせに、南々瀬が関わった途端にいつみは自己主張が強くなるから困る。