ハッと思い出したように、いつもの白桃色のリュックを揺らしながら彼女は走っていく。

そっか。さっきすれ違って軽く話したけど、大和も実行委員で早く来ているから、今日はみさとひとりで来たのか。



「ルアちゃ〜ん。

なんで姫にくっついてんのかな〜?」



「なにぼけーっとしてんだよ」



ふと耳に入ったのは聞き慣れた声で。

顔を上げれば、わたしと同じ腕章をつけた椛と莉央の姿がある。まだ本格的な見回りはしなくても大丈夫だろうけど、一応ふらっと歩いてみてるらしい。



「かくにん、終わったよ」



「お〜、偉いじゃねえの」



ルアによしよしとしながらも、わたしから引き剥がしている椛。

普段C棟から出てこない彼らがいるから、登校してきた生徒たちが色めき立ってる。




「おはようございます……っ。

騎士先輩、馬村先輩、ルアくん……!」



「おはよ〜」



「おー。はよー」



ゆるーく笑って手を振ってあげている椛と、あまり感情はこもっていないけれど挨拶を返してあげている莉央。

ルアに至ってはじいっと女の子たちを見つめたあとに、「おはよ?」って笑ってあげたから、1年生の女の子たちが悶えてる。



そうだ。

忘れてたけど、ルアはプリンススマイルを持つルノの双子の弟なんだった。



「姫川先輩も、おはようございます……!」



のんきに観察していたら女の子たちにそう言われて、一瞬驚く。

まさか声をかけられると思わなかったせいでぎこちなくなってしまったけど、おはようを返せば女の子たちは嬉しそうに校舎へと入っていった。