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文化祭の実行委員は、とにかく忙しい。
しかも書面上の作業ができるのはロイヤル部だけで、会議以外はロイヤル部を除く実行委員だけで進めてもらうことも多い。
けれどまあ実行委員だからといって、すべて把握できるわけもなく。
何か問題が発生すればこっちに話が回ってくるのだけれど。
「はい。備品の数が足りない?
ええっと、準備室に届いてるダンボール5箱の中身はすべて一緒です。……あ、はい。それです」
C棟には本来、直接連絡を取る術がない。
だからおそらく理事長が用意したんであろう専用のスマホがあって、そこに実行委員から連絡が入る。
そしてひっきりなしに連絡の入るそれの対応をしているのは南々先輩だ。
なぜなら俺らにはまだ別の仕事が残されているからで。
「はい。また何かあれば連絡してください」
そう言って彼女が電話を切った瞬間、また連絡が入る。
ずっと話しっぱなしで疲れているはずなのに顔色ひとつ変えない彼女は、全学科とクラスが書かれた用紙に、今度は電話しながら丸をつけた。
「ルノ、教養の1年2組最終チェック終了」
「了解です」
電話を終わらせて告げられた通りのクラスのファイルを移動させる。
最終チェックはそれぞれの持ち場で本日中にすべて終わらせなければいけない項目のことで、すべての持ち場でそれが終われば今日の俺の仕事は終わりだ。
といっても全学科全学年全クラスだけではなく、それぞれの持ち場ごとの最終チェックがあるため、まだ終わらないと言っても良い。
備品の数が足りないだの見当たらないだの確認したいことがあるだの、細かい連絡がひたすら続いていたけれど、それもだいぶ落ち着いたらしい。
最終チェックも半分以上終わったみたいだし、と。
ようやく静かになった電話に、彼女がホッと息をつく。
「最終準備になると、こうなるのね」
「規模がデケーからな。
つーかお前、なんで備品のダンボールの数から場所まですぐ資料見つけて事細かに答えられるんだよ」



