綺麗な感情だけでは生きていけないことを、わたしはもう痛いほどに知ってる。

だからそれについて文句を言おうとは思わない。



「……はい、いつみ。

代表して、南々瀬ちゃんに渡して」



ランチにチーズフォンデュを楽しんだところで、みんなから誕生日プレゼントをもらった。

丁寧に包装されていたそれの中身は綺麗な装飾が施されたティーカップと紅茶の茶葉。明らかに高そうなカップだったから、さすがに驚いたけど。



「南々先輩、いつも肩に力入ってません?

ひとりでゆっくり紅茶を飲むときぐらいはリラックスして欲しいなと思って、提案したんですけど」



「ありがとう……うれしい」



「こっちはあたしから。

あたしらの中に写真嫌いなヤツばっかりだから、なかなか続き集まんないかもしれないけど」



そう言って夕帆先輩に渡されたのは、1冊のフォトアルバム。

半分くらいは写真と、おそらく夕帆先輩が行ったんだろうデコレーションで埋め尽くされている。貼られている写真はロイヤル部のみんなのもので、パンフレットのときに使ったものと。




「ごめんね、綺麗に撮れてないのあるけど」



誰かが何気ない拍子に撮った写真。

写真を撮るために用意された表情じゃなくて、日常をそのままカットするみたいに撮られた写真。



「ありがとう、ございます。嬉しいです」



出会って間もないから、まだまだ思い出というには足りないかもしれないけど。

それでもアルバムに詰め込まれた写真が嬉しかった。一緒にいられる時間も、残り限られているけれど。……たくさん、刻んでおきたい。



わたしがここを離れる時、このアルバムだけ持っていけば良い。

寂しさもいつみ先輩への恋情も、ロイヤル部のみんなを想う気持ちもすべてここに置いて。──持っていくのは、このアルバムだけで良い。



だから残りの期間でたくさん写真を撮ろうと思う。

このアルバムのページが足りなくなってしまうくらい、たくさんの写真を。



残り4ヶ月。

迎えたときに残るのは、きっと……──。